「回避性愛着障害 絆が希薄な人たち」を読んで

 私は、岡田尊司氏著「回避性愛着障害 絆が希薄な人たち」を読んだ。

 当書では、回避性愛着障害の主な特徴として、「親密な関係、責任や面倒、チャレンジ、傷つくことや感じること等を避ける傾向にある」と述べている。更に、この様なタイプは現代人によく見られ、近年問題となっている少子化や晩婚化、又は核家族化等の現代ににられる家庭の問題の根本的原因が、この回避性愛着障害にあると述べている。これらの問題は、経済面から議論をされている事が多いが、その根本的要因は愛着や対人関係にあるという著者の意見に私は大いに共感した。

 情報化や近代化が進む中で、私達は対人関係において自立を求められ、以前は充実していたコミュニティも、今では欧米程では無いが希薄化している状況にある。つまりこれは、私達の対人間のつながりの希薄化を表している。その影響を受け、愛着障害は以前は虐待を受けた子ども等に主に見られる物とされてきたが、近年では、虐待等を受けてこなかった、普通の子どもや大人にもその症状は見られる。そしてそれは、全体の約4割にまで広がっていると言われている。そしてこれは少子化等の社会的に深刻な問題以前に、人々の意識に問題が発生していると私は思った。

 近年、若者の精神的な貧困が顕著に現れている。平成26年度に内閣府が行った、若者の意識調査では、「自分自身に満足している」という質問に日本を除く諸外国の若者は70%以上が満足していると答えている。一方日本の若者は、50%未満の若者しか満足していると解答しなかった。又、「うまくいくかわからない事にも意欲的に取り組む」と答えた若者も諸外国と比べて少ないことが分かる。日本人の自己肯定感の低さ等の原因には集団主義の影響等様々な事が挙げられてきたが、現代人の自己肯定感の低さや意欲の低さの原因はそれだけでなく、確実に愛着障害や家庭環境が関係していると考える。

 私はこの諸問題を解決するにはやはり行政のサポートが必要不可欠であると考える。主に女性の職場環境の見直しや、認可保育園の増加等が必要である。しかしそれだけでは根本的な養育者の意識は変えられない。実際に、なぜ今虐待等を受けてこなかった子どもが不安定な愛着スタイルを持ってしまっているかと言うと、それは親子間の関係が歪んでしまっているからだ。親子や夫婦間に存在する強すぎる支配関係、又は少ない関心が愛着に傷をつけてしまっている。そこで私は養育環境の見直しを強制する必要があると思う。現在、認可保育園等で主に意識されていることは、そのスペースや保育士の数等、表面的な事が多い。しかし、愛着や親子間の関係性に重きをおいて意識を変えさせる事で愛着障害の改善につながるだろう。

回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』 光文社新書 岡田尊司著