公益財団法人つなぐいのち基金 助成先取材レポート (任意団代)つばめの会

【高校生 インタビュー取材】

私たち、郁文館グローバル高等学校1年生は11月24日に公益財団法人つなぐいのち基金の助成先であるつばめの会さんに取材・インタビューさせていただきました。


郁文館グローバル高等学校 福祉ゼミとの協働プロジェクト「あいりすプロジェクト」の活動として、公益財団法人つなぐいのち基金の2018年度事業対象の助成先団体 のインタビュー取材としてお伺いしたものをレポートします。

突然ですが、このレポートを読んでくださっているあなたは、新しく生まれたあなたの家族が、生まれてから何ヶ月たっても水も、ミルクも、食べ物も、一切自分から口にしようとしなかったら、どう思いますか?

そもそも、摂食嚥下障害とは、食物を口に入れるところから胃に運ぶところまでのいずれか、または全てが上手くいかない状態(心理的な原因も含む)を言います。思春期の痩せ願望による摂食障害や、高齢者の筋力の衰えによる嚥下障害などは、有名なのではないでしょうか。

しかし、乳幼児の摂食嚥下障害は、未だ認知度が低いままです。そのため、摂食嚥下障害の子供を持つ親は、医療関係者を含めた周囲の人々に理解してもらえないことも。つばめの会は、そんなお母さんたちの声から誕生しました。

■(任意団体)つばめの会 団体紹介 (HPより引用)

”つばめの会”は、冒頭で挙げたような、摂食嚥下障害をもつ乳幼児の、親の会です。現在の会員数は、約200人。

|設立  2011年9月11日

|活動目標
・ 摂食嚥下障害の乳幼児の養育の負担の軽減・不安の軽減・親子関係を改善する
・ 摂食嚥下障害の乳幼児および家族のQOLの改善
・ 摂食嚥下障害の乳幼児の飲食の状況改善のための情報収集および公開
・ 摂食嚥下障害の乳幼児、および成長した小児の安定した通院・就園・就学
・ 摂食嚥下障害の乳幼児が適切な医療および福祉を受けられる社会になる

|活動目標達成のための活動内容
・ 会員同士のピアサポートおよび情報交換
・ 会員に向けた勉強会・講習会の開催
・ 当事者に対する相談業務
・ 受診施設の紹介
・ 医療・福祉・教育の分野に向けた啓発活動
・ 当事者としての講演活動や執筆活動、広報活動
・ 依頼に基づき、アンケートや研究への協力

つばめの会HP         

|活動の様子

つばめの会の会員は、忙しいお父さん、お母さんがほとんど。
そのため、会員への直接的なサポートは、イベントや集会のようなものではなく、メールによるものが多いです。

例えば、これは、あるお母さん会員の一日の行動時間。単位は、〈時間:分〉です。


(「つばめの会ニュースレター第5号」より)

”注入”とは、鼻などから入れるチューブを使って、子供に栄養を与える作業のことです。子供が吐いたり手遊びしたりしてチューブがすぐに抜けてしまう、嫌がって泣き叫ぶ子供にチューブを挿入しなくてはいけない、注入してもすぐに吐いてしまう、など、それに関する悩みは尽きません。そして、この例に挙げたお母さん会員の睡眠時間は約3時間半。こんな生活をしていては、心も身体もボロボロになってしまいます。
そんなとき、つばめの会へのメールで先輩に相談をしたり、愚痴を聞いてもらったりすれば、”辛い思いをしているのは、自分だけじゃない”と思えれば、少し気が楽になる気がします。また、つばめの会では、乳幼児の摂食嚥下障害に関する新しい知識や情報を得ることもできます。

ここまでは、つばめの会や乳児の摂食嚥下障害に関する、基本について、一部ですがお伝えしてきました。ここからは、つばめの会代表 山内京子さんから伺った、ちょっと深いお話をお伝えしていきたいと思います。

(山内代表)

つばめの会さんから見た社会における問題、解決したい社会課題とは?

経管栄養(チューブによる栄養摂取)の子供や、その子育てに対する医療・福祉的サポート&理解が足りないと感じるそうです。

食べる・飲み込むといった動作に対して医療ケアをするのは、本来、歯科医の仕事。ただ、乳幼児の場合、歯科医と小児科医の連携が上手くいかず、どちらの医者もきちんとケアをできない状態が多いそうです。

また、国からの障害者認定をされないため、摂食嚥下障害としては福祉サポートもきちんと受けられないそうです。

高校生ボランティアにできることは?

実は、親の負担が一番大きい”注入”に関しては、ボランティアが手伝うのはかなり難しいのが現状です。なぜなら、子供の命に関わるから。誤嚥性肺炎などのリスクがあるため、注入を許可されるのは、親か有資格者のみだそうです。

それでも、ボランティアにできることもあるはず!と、たくさん話し合いました。すると、車で出かけるときに後部座席で子供の世話をする、家で親が子供の世話をしている間に家事をする、などなど、たくさんのアイディアが出ました。

また、山内さんから、娘さんが未熟児として病院に入院していた際、NICU(病院の新生児集中治療室)が、子供の成長記録アルバムを作ってくれた、というお話を聞き、実物も見せていただきました(シール🐻やペンなどで可愛らしく作られていました)。ここまで細やかな配慮をしてくれる医療機関でも、乳幼児の摂食嚥下障害に対する理解がないことが多いと聞き、複雑な気持ちになりましたが、私達高校生にも、このアルバムづくりに似たボランティアができるのではないか、とも思いました。

残念ながら、まだ、つばめの会で、ボランティアのシステムは構築されていません。他福祉団体では、ボランティアの導入に対する抵抗が大きいこともあるそうなので、ゆっくり、できるところから取り入れていってほしいと思いました。

現段階で私達にできることは、現状を知り、情報発信をすることです。ぜひ、今から始めましょう。


(山内代表とご家族)

この活動を通じたやりがいは?

私が、「この活動でやりがいを感じるのはどんなときですか。」と質問すると、「やりがいを感じていいのか疑問です。」という答えが返ってきました。理由は、将来的にはつばめの会を必要としない社会が理想だから、ということでした。

そこで、「手応えを感じるときは?」と質問すると、「乳幼児の摂食嚥下障害や、つばめの会について知っている方が増えたのを実感したとき。」と。つばめの会は、医学系の学会などでも啓発活動を行っています。その地道な活動が実り、最近は、医療関係者の中でも乳幼児の摂食嚥下障害に対する認知が広まっているそうです。

また、一緒に活動する人が増えていくこと、そして彼女らの熱意に、代表の山内さん自身が勇気づけられたり、元気づけられたりすることもあるそうです。

今年度の私たち社会福祉ゼミの活動テーマは「人々の幸福のため」です。
つばめの会さんにとっての幸福とは?

つばめの会にとっての幸福とは何か、聞いてみました。

すると、「食べること、大きくなる(成長する)ことは、人類共通の幸福です。」という、印象深い答えが。

その幸福を守るため、仕方ない苦労もあれば、そうでない苦労もあります。例えば、子供の注入のために、親が3時間半しか寝ないのは、”仕方ない苦労”ではありません。

このお話を聞き、つばめの会の活動は、子供だけでなく、家族、ひいては社会の幸福を守る活動なのだと実感しました。

(つばめの会のスタッフのみなさん)

最後に、取材を通じて学んだこと

最近、給食の「完食」指導をどこまですべきか、議論されています。

私は、この取材をするまで、子供の摂食嚥下障害について、詳しく知りませんでした。そして、この”給食の「完食」指導”問題に対して今までは、「完食」とまではいかなくても、どの子供も、一人分のお盆に乗ったすべての料理を一口ずつくらいは食べてみるべきだと思っていました。もちろん、私の考えがあっているかどうかは、わかりません。

しかし、そんな私にとって、代表の山内さんがある医者から聞いたという、「かっぱえびせんでもいいじゃないですか!」というセリフは、とても印象的でした。

かわいい我が子が、何も食べないのに比べれば、たとえ”かっぱえびせん”だけでも、食べてくれたほうがよっぽど良い。

子供を想う親の気持ちでできている”つばめの会”を表すのに、ぴったりの言葉だと思いました。

つばめの会 テーマソング「つばめ天国」(おさかな天国 替え歌🐟(JASRAC承諾済み))

つばめの会のことがよくわかる曲です。ぜひ聴いてみてください。(かわいいイラスト付き❤)