公益財団法人つなぐいのち基金 助成先取材レポート 学び塾「猫の足あと」

郁文館グローバル高等学校 福祉ゼミとの協働プロジェクト「あいりすプロジェクト」の活動として、公益財団法人つなぐいのち基金の2017年度事業対象の助成先団体 のインタビュ-取材してお伺いしたものをレポートします。


 

私たち、郁文館グローバル高等学校3年生の2人は10月20日に公益財団法人つなぐいのち基金の助成先であるNPO法人学び塾「猫の足あと」を訪れ、取材・インタビューさせていただきました。

まず、学び塾「猫の足あと」さんについて紹介させていただきます。
学び塾「猫の足あと」は塾に通う事のできない相対的貧困家庭の子どもたちに無料塾のサービスを提供しています。また、「猫の足あと」ハウスを建設し、子どもたちに居場所を提供しています。

 

■学び塾「猫の足あと」(パンフレットより引用)

|団体の目標
1. 貧困と格差から子どもを守る。未来に希望が持てるよう、必要な子どもたちに学習・食・住居を提供する居場所を作る。
2. 子どもたちと共に自主的な学習をすすめ、人間としての権利を尊び科学的真実を愛し民主的社会の成員として成長できるよう支援する。

|活動概要
事業1:無料の学習支援
1. 中3勉強会 毎週月曜日19時〜20時45分 18時半から夕食を提供します
2. 中学生勉強会 毎週木曜日19時〜20時45分 18時半から夕食提供します
3. 小学生宿題クラブ 毎週月・木曜日 16時〜18時 おやつがあります おわったら遊びも

事業2:学習活動の企画・協力
学びの要求に応え、今後、自主学習会や講座、実験教室、社会科見学などを企画したいと考えています。会場費として原則大人100円徴収いたします。

事業3:「猫の足あと」ハウス 若者に住居を提供
子どもの貧困は、住環境の貧困にもつながっています。家族などの支援がなければ、一般のアパートで一人暮らしを始める事はかなり困難です。また、貧困以外の生きづらさや課題を抱えている若者も多いでしょう。そうした若者にできるだけ安く住居を提供するとともに、食や学びの要求にも応え、貧困の連鎖や孤立から自立へ歩み出すための応援に努めます。

1. 対象
例えば児童養護施設を卒所した若者、家族の支援が受けられない若者、奨学金を受けながら学ぶ学生、奨学金返済中の非正規労働者等家賃負担軽減を望む若者に。

2. 条件
面接の上で、契約書を交わします。費用は35000円〜42000円(家賃プラス共益費10000円)他の入居者や教室利用者、地域の支援者などと交流し、お互いを尊重し、助け合い,誰にとっても良い環境であるように暮らすことを目指します。

3. 入居
入居期間は自立までの期間とし、年数・年齢などでは区切りません。空き室があれば随時入居可、敷金礼金・保証人などはいりません。

 

facebookページ  https://www.facebook.com/nekonoasiato2017/

■ 活動のきっかけ

代表の岸田さんは彼女自身の幼少期の思い出から孤立する子どもたちへの支援活動をはじめました。彼女の家庭の経済状況は決して良いとはいえませんでした。当時就学支援は現金支給のシステムだったため、家庭という個人が属するステータスに対するプライドを傷つけられたそうです。経済的な不利の中でも勉強などを頑張ると親や先生に褒めてもらい、努力することの有意義さを学ぶ一方、「いい子」であるために真の想いを隠しがちな自分に疑問を抱いていました。岸田さんは彼女自身が周囲の人々から助けられた為、同じ役割を担うことで困っている子どもたちを救おうと活動しています。

 

■ 貧困の今と昔

時代とともに日本における貧困のあり方も変容してきました。昔は個人と地域など社会との繋がりがあり、比較的子どもが孤立しにくい状態がありました。一方で、現代は核家族化や地域コミュニティの希薄化が進行することで貧困が見えにくく、そして相談しにくい社会となっています。岸田さんは貧困下にある人々に対する自己責任論が彼らの孤立を深刻化させていると考え、改善させようと猫の足あとの活動を通して試みています。

■ ボランティアに対する考え方

ボランティアの方々は主に近隣大学の学生さんです。岸田さんは彼らに対し少しの謝礼を支払うことで問題意識から来る慈善的なボランティアで終わらせず、責任感を持って子どもに接してもらうことを意識しています。更に、大学生は大人よりも年齢的に近く、親近感を持って関われるため学業の支援だけでなく心理ケアの意味でも大学生が教えることにメリットがあると言います。また、代表の岸田さんはボランティアに活躍してもらうだけでなく彼らにとっても人生における学びの機会にしてほしいと願っています。私も今後学生ボランティアをする際に責任感と当事者意識を持って取り組みたいと思いました。

 

■ 代表の考える理想の親子関係

「猫の足あと」ハウスを始めると共に、岸田さんが目の当たりにした問題、それは「親からの自立が必要な子ども達」でした。時代の変化によって苦しんでいるのは子どもだけではなく、親も同様に苦しんでいます。その様な社会での子育ては、誰にも助けを求められず、親を精神的に不健康な状態に陥れてしまいがちです。この様な現状で、子どもは「自己の家庭を俯瞰的に見る」ことが必要だと岸田さんは考えています。又、一般的な家庭のモデルというのは、父1人、母1人に2人程の子どもがいる家庭が想像されますが、より多様性を認める社会を目指して、父が2人に子どもが1人等、様々な家庭の形が認められても良いのではないか、とも話していました。

 

■ 代表の考える猫の足あとの理想のあり方

現在、国や地方自治体も貧困問題解決の為に政策を勧めています。しかしながら、どうしても支援が全ての困窮者に行き届くというのは難しいです。そこで、猫の足あとは行政の手が行き届いていない隙間を埋めることを大きな目標としています。また、行政に対して一方的に依存するのではなくNPOとして行った活動がモデル事業として取られることが理想像でもあります。

取材を終えて

今回の取材で最も印象に残ったのは代表である岸田さんの活動に対する心構えです。活動を発足する時自費で施設を建てたというエピソードを聞き、その原動力に驚きました。子どもの貧困や孤立から悩む子どもを救う活動をする動機の中に彼女の幼少期の体験や思いが含まれていることもまた印象的でした。一年間のゼミ活動のなかでNPOに限らず、福祉関連職に就く人の中には「偽善者」といった社会の偏見から自分の職に誇りを持てない人も多いことを知りました。その一方で岸田さんは彼女の行っている活動に誇りややりがいを強く抱いていて、生き生きとしていました。私は将来社会の一員として働くにあたってその意義や誇りを持って取り組みたいと思いました。(高校三年 M)

近年、「NPOは持続可能ではない」という意見をよく耳にしますが、今回の取材を通してこれからのNPOのあり方について考えさせられました。現在、NPOの多くの団体が行政から豊富な支援を受けられていない現状にあります。しかし、団体側も行政に依存するのではなく、ある程度自立した事業計画が求められていると感じました。又、岸田代表は主に子どもの貧困の解決に向けて取り組んでいますが、近年では貧困以外の問題も見られるとおっしゃっていました。特に、地域コミュニティの希薄化から若者の孤立が目立っています。その事から、これからのNPOをより民間と密接に、又、持続可能にさせるには、その様な社会の変化に柔軟に支援を充実させる事ではないかと考えさせられました。(高校三年 H)

※ 高校生のプライバシー保護のためイニシャルとさせていただいています。

 

 


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