子どもの居場所の在り方

 

私は、他者に対して寛容でなくなってきている日本の現状に問題意識を持つ。この現状が顕著に現れている例として、セクシャルマイノリティや障害を持つ人など、マイノリティと呼ばれている人々に対してポジティブなげられる。私はマイノリティに属する人々が、そうでない人々と対等に扱われる必要があると考える。近年、日本ではマイノリティの存在が認知されつつあるが、未だに職場におけるLGBTの認知率が47%であるというデータが日本労働組合総連合会の調査で明らかにされたからである。

そこで私は、マイノリティの人々を含め、多くの人が自分の絶対的な居場所を見出すことが重要であると考える。居場所とは居心地が良く、生きがいを感じられる場所のことであり、居場所があることによって自分らしい生
活を実現させることができ、精神的に余裕が生まれ、他者に対しても寛容になることができる。だが、居場所がないと絶対的自信を持つことが難しく、自分にとって生きづらい環境ができてしまう。これらの理由から、他者に対して寛容になり、より多くの人々が生きやすい社会を実現させるために、まず自分の居場所を見出すことが必要であると考え、居場所の在り方について研究することを決意した。

私がこのように考えるきっかけは、小学1年次の経験にある。私には多くの友達がいたのだが、他人とコミュニケーションがうまく取れず、意思疎通ができなかった。そのため自分らしい生活ができず、自信を失ってしまった。当時は自分自身で解決策を見つけることができなかったが、担任の先生が私が直面していた問題に気が付き、面談を重ねてくれた。その結果、私は自分の居場所を見出すことができ、満足した生活を送ることができた。

また、ニュージーランドに留学中、私は日本とは異なる文化背景を持つ人々に自分の存在を認めてもらい自分の居場所を見出すために、自分の意見をはっきりと相手に伝えることが重要であると考えていたため、それを実践していた。だが、現地校のフィリピン人の留学生とコミュニケーションを取っていた際、相手の文化や習慣を理解せずに発言をしてしまったために、関係を崩してしまった。そこから自分とは異なる文化的・歴史的背景を持つ人々と関わる際は、それを理解した上で、相手の意見を尊重することが必要であることを学んだ。

これら2つの経験から、まずは自分の居場所を確立することが重要であり、それが達成できると相手への配慮や尊重など、他者について考えられる余裕ができることと考えた。

居場所とは、誰かとるからできるものとは限らず、「誰かといなくてもそこは居場所となりうる」(注)。だが、集団主義的な考えを持つ日本において、「ひとりでいることはスティグマ化することもある」(注)。建前と本音の文
化を持つ日本人は、建前上での関わりで相手との平衡を保っていることが多いため、他者に対して寛容であると同時に居場所があると錯覚しやすい。だが、建前のみで他者と関わることによって、自分をさらけ出す場が減り、自己肯定感が低下する。そこで私は乳児期、幼児期から自信を持てるような環境で生活をしていたら、たとえ居場所が無くなったしても、再び探すことができると考えた。私は、児童養護施設聖友ホームのボランティアにて、家庭で虐待を受けたりやネグレクトを経験したりした子どもたちは、その経験をしていない子どもに比べ、自己肯定感が低く、満足した生活を送りにくく居場所を見出すことが困難であることを知った。そこで施設職員が子どもたち一人ひとりと関係を築き上げることで施設を1つの居場所と捉え、自己肯定感、自己有用感に繋
がり、自信を持ちやすいことを学んだ。

戦後、生活基盤が失われた日本において、地域コミュニティが相互扶助の機能を果たしていた。しかし高度経済成長期以降、都市部に人口が集中し核家族化が進むと同時に、地域の結びつきが弱くなった。それまでは子どもの育児を地域全体で支え合っていくことが一般的であったが、地域コミュニティが希薄化している現在では、保育施設の需要が高まっている。だがその影響で特に都市部において、保育施設職員不足という問題が起こっている。私は、この問題は子どもの、居場所を見つける力を養いにくくしていると考える。保育施設において職員の数に対して子どもの数が増えることによって、職員が子ども一人ひとりと向き合うことが難しくなるからだ。そして、子どもたちが抱えている問題に気が付きにくくなり、満足した生活を送れない子どもがいるという問題が起こるだろう。固定概念があまりなく、好奇心に溢れている子どものうちに違う立場や年齢の人々とコミュニケーションを取り他者の意見に触れることで、成長する過程においてや社会に出てから多様な意見や考えを受け入れ、他者を尊重することができるだろう。そのためには、自分の居場所があり、自分自身や自分の意見に自信を持たなければならない。私は、個人の幸せやライフスタイルが多様化してきた現在、一人ひとりのニーズに合った対応をしなければならないと考える。これまでの政策や対応に固執するのではなく、一人ひとりの求めているものを理解した上で諸問題に向き合うことで、より多くの人がそれぞれの居場所を見出すことができ、他者に対して寛容な社会が実現するだろう。

 

注『居場所の社会学 生きづらさを超えて』阿部真大(2006)より引用

参考文献
居場所の社会学―生きづらさを超えて』 日本経済新聞出版社)阿部真大
『入試までに必ず読んでおきたい 現代文テーマ別頻出課題文章』(駿台文庫)二戸宏羲
『人間の居場所』(集英社新書)田原牧
『仕事と家族』(中公新書)筒井淳也
日本労働組合総連合会 LGBTに関する職場の意識調査
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20160825.pdf?0826