郁文館グローバル高等学校 福祉ゼミとの協働プロジェクト「あいりすプロジェクト」の活動として、公益財団法人つなぐいのち基金の2018年度事業対象の助成先団体 のインタビュー取材としてお伺いしたものをレポートします。
【高校生 インタビュー取材】
私たち、郁文館グローバル高等学校3年生は10月4日に公益財団法人つなぐいのち基金の助成先であるNPO法人チャイボラさんを訪れ、取材・インタビューさせていただきました。
■特定非営利活動法人チャイボラ 団体紹介 (HPより引用)
まず、NPO法人チャイボラさんについて紹介させていただきます。
|団体概要
チェイボラさんは、児童養護施設への就職に関心のある方と施設をつなぐことをメインに活動している団体です。施設見学会、施設の子ども達と遊ぶイベントの企画運営、情報サイトの制作等を行っています。
|団体のミッション
・STEP1 施設で働く人を増やす
児童養護施設のことを正しく知ってもらうための学習会や、子どもたちと触れ合う施設見学会等の企画運営サポートを実施しています。
また、学生が働きたくなる実習のサポートも行っています。
・STEP2 職員が働きやすい環境を追求する
職員さんが長く働ける環境を作ることは施設の子どもたちにとって重要だと考えます。事務作業の効率化のサポートや、その他、施設職員さん向けのサービスを開発中です。
・STEP3 施設や支援者と、支援を必要としている人をつなぐ
支援を必要としている人と施設、または支援をしたいと考えている人をつなぎ、支援の輪を広げるためのプログムを開発中です。
|団体の活動概要
現在はSTEP1として下記の活動に注力されています。
- 施設見学会・イベント企画運営サポート
見学会の企画運営だけでなく、告知物制作や告知のサポート、WEBアンケート制作、総括まで行っています。 - 施設就職、転職個別サポート
施設への就職を考えている方や、別の施設への転職を考えている方からの個別相談を受けています。 - HPに関するアドバイス・情報サイト制作サポート
施設のHPについて、就職志望者はどこを見ているのか?どんな情報を欲しているのか等をお伝えしています。 - 実習生受け入れサポート
実習生へのインタビューを元に、「就職したくなる実習」について研修会を実施したり、実習生の気持ちをまとめた冊子を制作しています。
NPO法人チャイボラ HP http://www.npolittleones.com/
facebookページ https://www.facebook.com/chaibora.4children/
NPO法人チャイボラの大山代表からお話しを伺いしました。
Q.法人の立ち上げの経緯についてお聞かせください。
チャイボラは、保育士の専門学生が中心に立ち上がった団体です。
授業を受ける過程で、社会的養護の施設に関心を持ったクラスメイトが、様々な理由からうまく施設に繋がることができず別の道へと進んでいった様子を見て活動を始めました。
始めは、自分の学校の生徒の中で児童養護施設に関心のある人を募り、施設で子ども達と遊び、職員さんと交流するイベントを月1回からスタートしました。
毎回15名程の人が集まり、皆、関心はあるけど施設と繋がるのが難しいと言っていたこともあり、活動の幅を広げようと決意しました。
現在は都内複数の施設と連携し活動しています。
Q.チェイボラさんから見た社会における問題、解決した社会課題について教えてください。
現在、児童養護施設を始めとした社会的養護の施設の多くが、職員不足という課題をかかえています。このような状態ですと、職員にどんなに想いがあっても、子どもたち一人ひとりに出来ることに限界がでてきます。
一方で、施設で働くことに関心を持った学生が、なかなか施設に繋がらないという現状もあります。
保育士の専門学校で出会ったメンバーを中心に、自分たちも働きながらこれらの課題を解決できたらとの強い思い共有して、課題自体を解決していく団体を立ち上げたわけです。
Q.これからのビジョンとそれに向けて今行なっている活動について教えてください。
ビジョンは「子どもたち一人ひとりが大切に育てられる世の中を目指して」ですが、目指す過程で、チャイボラとして大切にしていきたいことがあります。
まず、『虐待をされた子ども・虐待をした親』、『親と一緒に生活できない子ども・子どもと一緒に生活できない親』、その両者を支えるのに施設職員、関係機関の人たちがいますが、それぞれに様々な事情や生きてきた背景があることは私達も含め皆同じだと思います。
このように、『自分とは違う環境で生活してきた人』が友達や同僚、近所や親族にいたときに、「こういう人なんじゃないか?」と自分が持っている価値観でその人を見るのではなく、その人『個人』を見て接することができたらいいなと思っています。
また、そうすることが目指すビジョンに繋がることも発信していきたいです。
Q.この活動を通じてやりがいを感じるときはどんなときですか?
質問の答えそのものではないかもしれませんが・・・
昨今、施設を出た後の子どもへのサポート(アフターケア)への注目が高まっています。
1人でも多くの方に社会的養護の実状を正しく知ってもらい、支援してもらうことはとてもありがたいことです。
しかし、その子ども達を日々支えている「職員」へのサポートはあまりに手薄に感じます。施設を出た後に自立して生きていけるかは、日々の施設での生活(インケア)にかかっています。そのインケアの内容も質も、継続性も全て職員によって変わってきます。
チャイボラは、日々子ども達とその親と社会に向き合い支援し続ける職員の実状を発信し、ケアを充実させることで、最終的に子ども達の自立に還元していきたいと思っています。
そんな目標に一歩一歩近づいていると実感できたときにやりがいを感じます。
Q.この活動をする上でのMottoや大切にしていることは何ですか?
子どもたちの養護には本当に多くの方が関わっていて、様々な見方や考え方をお持ちです。だからこそ、偏見や一つの考え方や手法などに固執しないようにしたいと思っています。
例えば、 「施設の子だから、、、施設出身だから、、、」といった色眼鏡で見ている方がいらっしゃるのも事実です。そんな方にも、違った視点や考え方をゆるやかにお伝えしていくことができればと考えています。
Q.今年度の私たちのゼミのコンセプトは「人々の幸福のため」です。
貴団体にとっての幸せとは何かを教えてください。
幸せという表現にピッタリな回答かどうか分かりませんが・・・
やはりミッションを達成することだと思います。
例えば、Step1の今は、児童養護施設に就職する人が増えることで「子どもが職員と接する時間が増える」と嬉しいです。
STEP2~3では、施設の持っているリソースである「専門性を必要とする子どもへの対応ノウハウ」が地域や必要とされている方々に共有されること。
そして、団体のビジョンである「子どもたち一人ひとりが大切に育てられる世の中」という目標に向かって、子どもたちの育成環境が良くなってきているという実感が持てるようになってくれば、それが団体にとって私にとっての幸せだと思います。
Q.私たち高校生が貴団体で活躍できるフィールドはありますか?
児童養護施設の子どもたちと関わるには配慮すべき点がたくさんあります。
特に世代が近い子どもたちとは慎重に関わる必要があります。
そのような中で、高校生の活躍の場所として私が提案するのは、「幼児や小学校の子どもと関わるイベントの企画運営」「現状の課題やイベントなどのプロモーション活動」「就活イベントなどの運営ボランティア」などです。
活動について是非検討しみてください。
◆団体に参加している他のメンバーの方にもインタビューさせていただきました!
〇野尻さん
以前から子どもに興味があって保育の資格を取ろうと専門学校に通しました。
その中で、児童養護施設の現状や入所する子どもたちが多くが虐待の背景を抱えていることを知りました。特に、自己肯定感が低い子どもたちが多くいることが本当に残念でなりません。
大山と専門学校で出会い、児童養護施設の職員の数を増やすという目標に共感し、二人三脚で今に至っています。
〇高瀬さん
私は、「社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業に対して、資金の提供と、パートナーによる経営支援を行う」SVP東京という支援団体に所属しています。大山代表が投資・協働団体に応募された2017年5月にそのヒアリング担当になったのが出会いです。 その後、仮の協働を通じて、チャイボラが持つ強みとターゲットとする課題領域にブルーオーシャンといえる可能性を感じました。また、何より、大山代表を始めメンバーの皆さんの熱意と人柄に魅力を感じました。以前から子供のための課題解決のための団体で活動したいという希望があったこともあり、監事として団体に参画するというお誘いを受け快諾し、今に至っています。
〇福田さん
この団体に参画したのは、児童養護施設出身者の支援活動をしている父の影響もあったと思います。そして、もう一つは、新卒で就職した会社からの転職を考えていたときに、テレビ番組の「情熱大陸」で、ビジネスとソーシャルでパラレルに働くという働き方を知り、「これが自分の理想の姿だな」と感じたことが大きいです。
「子どもの成長に関わることをしたい。」という思いで、大山の団体立ち上げ時から一緒に活動しています。
〇みつるさん
僕は就職した会社の配属先で、あるサッカーチームの子ども達のコーチをやっていました。その中で子どもの特長を感じ取り、成長に寄り添うことに強いやりがいを感じていました。
その様なタイミングで、代表である姉から社会的養護施設や子ども達の現状を聞きました。
このまま何もしなければ、「人が目の前で倒れているのに横を素通りしてしまう」といった感覚が強くなりました。そこで、サッカーを通じて施設の子どもたちの成長に関わって行ければと思い、一念発起し、会社を退職して現在はチャイボラの活動に力を入れています。
サッカーは、頭•心•身体の全てを養うことができる有効的なスポーツと考えています。
「発達のゴールデンエイジ」と言われる大切な時期に、そのトレーニングや成長の機会を施設で生活する子ども達にも作ってあげたいと考えています。
チャイボラさんには、団体内のメンバーだけでなく、そのビジョンに共感し協働する様々なパートナーさんもいらっしゃいます。
力強いITスペシャリストのパートナーの斎藤さんもご紹介します。
職業体験サービスなどを提供する株式会社仕事旅行社さん、一般社団法人三十路祭りさんなどでエンジニアとして活躍のご経験をお持ちです。IT業界で仕事をされている中で、異なったカテゴリーでの一つのアウトプットとして協働されています。
取材を通じて学んだこと
私は今回取材をさせていただいて、子どもたちを社会的に養護するために施設の現状について勉強することができました。虐待などを受けてきた子どもたちのための生活の場で、ある意味で親にあたる職員のみなさんが不足していることに課題を持ち、大企業を辞めて活動を開始した大山代表は同じ女性として目標とすべき方だと思いました。ぁ貴重なお時間をありがとうございました。(高校三年 A)
※ 高校生のプライバシー保護のためイニシャルとさせていただいています。